体内ブラックボックス

人間の体内に全てのことを記憶しておくことができる、ブラックボックスという存在があることが明らかになった。
最期に見た映像、心で発した声なども記録されるため犯罪捜査に利用された。これにより冤罪事件は、ほとんど無くなった。

しかしある事件で、容疑者の男は頑なに犯行を否認した。車いすに乗っていた老齢の男を後ろから刺殺した事件で、容疑者は被害者の息子だった。息子は父親を嫌っていた。
ブラックボックスにも息子の名を呪うように呟く父親の声が入っていたし、最期に見たのも息子の顔だった。

やがて良心に耐えかねたのか息子の妻が出頭してきた。介護疲れで思い余って義理父を刺し殺してしまったらしい。
父親の最期の声も息子を心配し発した声だったらしく、最期に見たのも息子が心配して覗き込んだ顔だったのだろう。
息子も捕まりたくはないが、妻の犯行と言うのも気が引けたのだろう。
いろいろな意味で後味の悪い事件だった。