語る男

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幽霊くんーー。
私が今後、君以上に凄惨な死を迎える可能性だってあることーー、
君は考えたことがあるのかな?
そういった可能性を秘めた相手に恨みを語るなど、本末転倒ではないかね?
どう思う?
……君はよっぽど強い恨みを抱えているのだろう。『お気の毒さま』なんて言葉ではとても軽すぎて逆に失礼になってしまう。
ーーすまないが、君の気持ちに寄り添えるような、適切な表現が今本当に見つからない。ただ、君に対するーー、うまく言葉にできないんだけどーー、なんというか、君の苦しみを慮る気持ちと、それと同時に君の安らかな眠りを心から祈らずにはいられない、そんな気持ちだけはちゃんと持っていることを分かってほしい。逆に教えてほしいぐらいだーー君の気持ちを和らげる言葉をね。
ーーだがしかし君はなぜ恨みの根源に直接対峙せずにこんな初対面の私なんかのところにーー、

語る男を尻目に、幽霊はそそくさと夜の闇に消えた。
ファンタジー
公開:22/09/17 18:52
更新:22/09/17 21:16

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