口癒し

口癒しという物が売りに出された。怪我をした所とか痛む所に口癒しを当てると、痛みを緩和してくれるのである。湿布や塗り薬と違い、温かな安心感があった。
ベタベタする感じが嫌だという人もいたが、母親に舐めてもらった感じを思い出すと郷愁に浸る人も多かった。大人向けの癒し道具ができた。
と思っていたら、口癒しに歯が生えてきた。体に当てたら噛んでくるのである。癒されるどころか、怪我をするようになった。
さすがにみんな、メーカーに文句を言った。メーカーは、いやそんな意図で作ってないと困惑するばかりだった。
メーカーが回収するということで、袋や箱に入れようとしても自我を持ち始めたように突き破ってくる。
ハンマーなどで叩き割ろうとしても、攻撃をかわして襲ってくる。口癒しに襲われ大けがをする者や、死ぬ者まで出てきた。
テロ活動用に誰かが改悪したのか、物が自我を持ち始めたのか分からなかった。