回して、回シテ……

二学期が始まってすぐ、僕の学校では放課後のガチャガチャが禁止された。お金の無駄づかいも理由だけど、一番の原因は夏休みに流行った怪談だ。
四次元ガチャ。四時四四分にガチャガチャを回すと、ガチャ機のカプセルに閉じ込められ、次に誰かが引くまで出られない。実際に試した生徒が行方不明になり、お店のガチャ機が撤去される騒ぎになった。

先生も分かってないな、禁止するからやりたくなるのに。
そう言ってわざと回し、行方不明になった当の生徒が僕だ。もう何年、それとも何十年か、ガチャガチャの無い町で、回してくれる手を待ち続けている。


――ガチャ。
とうに忘れかけた音が響き、カプセルに丸まった僕は光の中へ転がり出た。
助かった、やっと出られる！
大喜びも束の間、全身にガツンと衝撃が走り、僕は再び真っ暗なガチャ機に戻された。
「かぶっちゃった。要らないや」
笑って僕を放り投げたそいつは、僕と同じ顔をしていた。