タイム・カプセルトイ

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同窓会でタイムカプセルを開けるというので、四十年ぶりの故郷へ帰省した。
例年お盆に届く案内は無視していたが、先日こちらへ来た級長に熱心に誘われ、断りきれず重い腰を上げたのだ。

「わざわざ合わせてくれなくていいのに」
「みんなお前に会いたかったんだよ。気持ちを汲んでやれ」
昔と変わらない分別じみた物言いの、顔は相応に老けた奴に手を引かれ、今は閉めてしまった駄菓子屋へ。カラカラ鳴る引き戸を抜けて、九月半ばのぬるい風が頬を撫でた。

「やっと来た。久しぶり」
「そっちでも元気してた?」
「お、級長。幹事お疲れ」
懐かしい面影と馴染みのない声に少し怖気ながら奥へ進む。昔はガチャガチャと呼んだカプセルトイが、錆びたハンドルも十円傷もそのまま目の前にある。
「回してみなさい」
白髪頭の先生に背中を押されてハンドルを握る。
じわりとにじむ視界で、いつまでも幼い手が、みんなと同じ大人の男に育って見えた。
その他
公開:22/09/19 17:08
月の音色 月の文学館 テーマ:カプセルトイ SSG投稿1500本目! いつもありがとうございます。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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