文通

郵便受けを見ると一枚の手紙が入っていた。中を開くとそれは俺宛ではなく、違う人に当てた手紙だ。しかし住所は俺の所。どうやら俺の前に住んでいた人に当てた手紙らしい。俺もここに引っ越してきてまだ二ヶ月だからな。放っておいても良かったが、俺はその人宛に手紙を書いて間違えていますよと知らせてあげる事にした。こうして彼女、佐川博美さんとの奇妙な文通が始まった。
「わざわざ手紙を書いて教えてくれてありがとうございます。実はこの住所の方と文通していたのです。しかし返事が来なくなってしまいました。私との文通はもう嫌だと思ったのか引っ越したのですね」
「管理人さんに訊ねてみました。どうやら前の方は交通事故で突然亡くなったそうです。あなたの事が嫌いになったわけではないと思いますよ。もしよければ俺と文通をしてみませんか？」
文通を通して１年。俺は佐川博美さんに会う事になった。病気で動けない彼女の病院へ向かった。