バスジャック

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 高速バスがバスジャックに遭った。
 黒ずくめの男が二人ライフルを抱えて乗り込み、車内が騒然とした。
「先輩、大丈夫ですよ」
 隣の後輩が俺に耳打ちした。
「ちょうど昨日のヤフーニュースで、警視庁が発表していたのを見ましたんで」
「何をだよ」と俺は声を潜める。
「もしバスジャックに遭った時の心得『てそうをみる』です」
「てそうをみる?」
「はい」
 後輩は安心してくださいと言うようにウインクした。
「『て』は抵抗しない。『そ』は率先して女性と子供を守る」
「それはもう『そ』じゃないぞ」
「いいんです。で『う』は運転手に話しかけない。『を』は落ち着く」
 フム、まあ分からなくもないが。
「『み』は見ないジロジロと」
「苦しい倒置法だな」
 そして、後輩は「やば」と言って頭を抱えた。
「『る』が分からない! だめだ、もうどうしようもない!」
 結局俺たちはバスジャックになすすべがなかった。
その他
公開:22/09/12 20:09

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