ジェラシーから出た錆

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女は時としてやきもちを焼いてほしいもの。
彼女は特にその気持ちが強かった。彼が好きとか愛とか口にしないタイプだから余計に。

今日も彼がゲームに夢中なものだから、ちょっと愛情を試したかったのだ。
「最近元カレが会おうってしつこいんだよね」
その言葉でやっと彼は関心を向けた。
「そのやり取り見せろよ」
実際何もないから見せられるわけがないけど。やんわりと拒否すると意外にも食いつき、「どんなやつ? 写真あったりする?」と尋ねてきた。彼女は引っ込みがつかなくなり、スマホ画面を見せる。
実は電車で隣に座って眠っていたイケメンをつい盗撮したのだ。こんな時に役立つとは。

彼は顔では敵わないと思ったのか黙りこくってしまった。
「…わかった」
「何が?」
「その人、俺にはすげーいい先輩で…そんな奴だったなんて。呼び出して文句言ってやる」

「やめとこーよ…」という彼女の声はか細くて彼には届かなかった。
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公開:22/09/12 19:08

ナユセナユ

どんでん返しが好き。ちょっとずつ書いていきたいです。

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