欠番を譲り受けた者

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おれは六大学リーグで通算三十本の、ホームラン新記録を打ち立て鳴り物入りで名門シャークスに入団した。
シャークスの監督はスーパースターとして知られた中川忠で、おれのことを気に入ってくれて、ぼくの永久欠番の背番号9をきみに譲るよと言ってくれた。
おれは喜んで受け入れた。しかしその直後、周りの人たちのおれを見る目が急に冷たくなってきた。まさか素直に承諾すると思わず、遠慮すると踏んでいたようだ。

何だよ人が好意として譲ってやると言ったものを受け取ることが、そんなに悪いことかよと闘争心に火が付いた。
おれはルーキーながら四番を打ち、打率三割五分、ホームラン五十本、打点百三十の成績を残し三冠王に輝いて優勝に貢献した。

それでも周囲の人は中川さんの方が、人間性は上だとか、あいつは天狗になってやがるとかケチばかりつけてくる。
ならばもっと活躍してやるよと励んでいたら、暴漢に襲われ選手生命が絶たれた。
その他
公開:22/09/13 22:46

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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