鍵穴

俺は泥棒だ。この道十年のプロだ。今日も金持ちそうな家に忍び込んで、現金を奪うとしよう。今日は前から目を付けていたお屋敷に入る。凄い家だ。貴族かよ。
「お貴族様、少し頂きますよっと。へへへっ」
俺は鍵穴に針金を突っ込んで開けようとした。しかしどれだけの時間をかけても鍵穴に上手くハマらず、一向に開く気配がない。
「あれ？おかしいな。なんでだ？どういう構造してやがるんだ」
更に鍵穴をガチャガチャとやっていると、急にピタリと針金が動かなくなった。
「もうっ、くすぐったいよぉ。やめてよぉ」
「な、なんだ！？誰かいるのか！？」
「僕だよ。鍵穴だよ」
「ひぃい！！」
確かに鍵穴から声が聞こえた。ビビった俺は一目散に逃げだした。後に分かった事だが、実はあの鍵穴。あの屋敷の主がイタズラ好きで、泥棒が来て鍵を開けようとしたら、録音した声が再生されるというものだった。さすがにこの道十年の俺でもビビってしまった。