集中緑

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受験まであと半年。なのに勉強に集中できない。学年一位の山田に相談すると、事もなげにこう言われた。
「そりゃあ君、木が散ってるからね」
「だから、気が散って困ってるんだよ」
「違う違う。木が散ってるんだ」
山田が指差した僕の左の胸には、いつの間にか小さな木が生えていた。
「花も緑もない寂しい木じゃないか。おまけに随分疲れてる。そりゃあ集中できないよ。まずはこの木を育ててみれば?」
それから僕は山田に言われた通り木の世話に力を注いだ。
芽が つ枯れないようにスマホを断ち、漫画やゲームに手を出さないよう余計な枝を剪定した。木が滅入る他人の悪口の土壌を離れ、優しい寛容植物を傍に植えた。
他人と比べてばかりで腐りかけていた根っこも徐々に回復を見せ、木に緑の葉や花が付く頃には面白いほど勉強に集中できていた。

そして合格発表の日。僕はお礼のメールを山田に送信した。

『サクラサク』
青春
公開:22/09/09 23:42
更新:22/12/03 18:36

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