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それは昼下がりのことだった。
「俺、やっぱりミュージシャンの夢諦めるよ」
職場の同僚から告げられた言葉に思わず箸を止める。
「おい、どうしたんだよ」
俺は同僚が仕事終わりや休日にバント活動に精を出しているのを知っていた。
「実は今結婚を考えている女性がいるんだ。だから地に足着けて生きていかなきゃなってな」
同僚の目からは不安が鈍い光を持って見え隠れしていた。まだ自身でも答えを出し損ねている様に見えた。
「お前本当にそれで良いのか?」
同僚は口をつぐみ、答えなかった。
「まぁ、そう焦るなよ。夜空じゃなきゃ星は見えないぜ」
それはまだ昼下がりのことだった。
青春
公開:22/09/07 07:31

リマウチ

超ショートショート書いていきます

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