レモネード

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いつものレモネードを注文する。そして、それを受け取ると僕はいつもの場所へ向かう。
そこは、公園のベンチだ。
「ふぅ……」
一息つく。
さっきまでの騒がしさが嘘みたいに静かで、僕だけの世界だった。
この時だけ、僕の心は落ち着くことができた。しかし、そんな時も長く続かないことは分かっていた。
「お兄ちゃん!」
遠くから声が聞こえた。その瞬間、僕の心は再びざわつき始める。
「やぁ、おはよう」
僕は、努めて冷静に答える。
「おはよう!今日もいい天気だね!」
彼女はそう言うと、嬉しそうな顔を浮かべる。
「そうだな……じゃあ行こうか」
「うんっ!」
彼女の名前は『咲』という。僕の近所に住む女の子だ。この子は親に虐待されている。
「飲むだろ?レモネード」
「うん」
親からの愛情を受けた事のない彼女に、せめて僕が出来るのは、優しさを彼女に与えてあげるだけだ。もうすぐ咲は、親元を離れるんだ。だからせめて。
公開:22/09/06 10:15

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

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ブラウン・シュガー
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