命は軽いか重いか

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「ずいぶんと惨めな姿ですね」
断頭台の上、俺は醜い笑みを見せる男を睨み付けた。まさに今この男によって俺の死刑が執行される。手も首も固定され、猿轡をつけられた俺にはもうなにも抵抗なんてできなかった。
「あなたは無実を潔白しようと孤軍奮闘したみたいですが、全てが無駄だったようで」
男は続ける。
「でも安心して下さい。あなたの死は皆さんに望まれたものですから。ここだけの話、あなたの妻と子供を殺したのはこの私です」
俺はその言葉を聞いて、我慢できずに力いっぱい暴れまわる。しかし、状況はなにも変わらなかった。
そして、刃が落ちる。

ザクッ

「う~ん。なかなかこれは素晴らしい」
紳士服を着た審判が切り落とされた頭を拾って唸った。
「この現代でここまで憎しみを孕んだ顔をみられるとは」
その後、男の優勝が発表された。男は生首を抱え、観衆の声援に爽やかな笑顔で答えた。
SF
公開:22/09/03 07:38

リマウチ

超ショートショート書いていきます

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