桜咲く

高校生に花の装着が義務化された。胸ポケットに造花をつけるのである。入学当初は合格して入って来ているのだから、誰しも満開に咲いている状態である。
だが学業や部活をサボっていると、花が次第に枯れてきた。本当に枯らしてしまうと停学処分となった。新しい花が貰えるのだが、繰り返すと退学処分となった。

学業に専念している人は綺麗な花が、部活に力を入れている人には個性的な花が、恋に奔る人には妖艶な花が咲いたりした。
企業や大学が採用するのも、やはり綺麗な花や個性的な花を咲かせた人を採用した。社会人になった人はまた違う造花をつけることになった。

社風に合わせた造花である。会社の意に沿った人は大輪の花を咲かせた。逆にあまり活躍できなかったり、楯突いた人は花を枯らしたり醜い花になったりした。
しかし考えてみれば、たまたまその人が社風に合わなかっただけで人格とは関係ない話である。
美とは残酷で冷たいものだ。