巨大ダンゴムシの話

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遺伝子工学の研究者である友人が、野球のボールほどの巨大なダンゴムシを作った。大柄なだけに外殻も固く、棒でつついたぐらいではびくともしない。
「なんのために、巨大化させたんだよ」
「これでビリヤードでもやろうと思って」
「なるほど、それはいい」
ぼくと友人は、ダンゴムシの背中に番号を書いて、ビリヤードを始めた。
ゲームはぼくが優勢に進み、あとはナインボールを落とすだけになった。配置もイージーだ。
もらったな。
そう思ったときだ。ナインボールがモゾモゾと動きはじめ、足をせわしなく動かしてそそくさと自ら穴に入っていった。
「おれの勝ちだろ」
「いいや違う。まだ君はボールを突いていない。つまり、まだゲーム権は自分にあり、最後にキューで突いたぼくの勝ちだ」
お互いに一歩も引かなかった。やむを得ずもうワンゲームすることになったが、その時にはボールは全匹逃げ出していた。
SF
公開:22/09/03 19:11

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