どちらが幸せ?

もう嫌だ。楽して生きたい。
人間関係や減らない残業に嫌気がさした俺は、人間をやめようと魔法使いの店に来た。
「犬、猫、鳥、キリン、ライオンなどが選べるよ。犬と猫は二千万円。他は一千万円だよ」
「値段の違いは何ですか？」
「犬と猫はペットショップで売られる。契約書により衣食住は保証されるけど人間じゃないから会話は成立しないよ。誰にも縛られたくないなら犬と猫以外だね。行き先はジャングルだよ。労働もなく自由があるけど、自分自身で衣食住を見つけないと生きてはいけないね」
どれにすると聞かれた俺はペットショップ行きの檻の中にいる犬と猫を見た。
「まだ人間でいいです…」
俺は店を出てそのまま家に帰った。
飼い主待ちの犬と猫たちは寂しそうな顔をしていた。
もう二度と親や友人と言葉や心を交わすことができないことに後悔しているように見えた。
「気が変わったらいつでもおいで」
魔法使いの老婆はひひひと笑った。