珍しい

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「傘を持たずに家を出ました」
「ええそうでしょう」
約束の時間、レストランの軒下、N氏の前に現れた男は雨に濡れていた。N氏と男は今晩食事を共にする。
「しかし珍しい。私が知るところによると、あなたは傘を持たずに家を出ることはない」
「はいその通りです」
男は席に案内されても尚、四角く畳まれたハンカチで身体を拭いていた。濡れた肩が落ちている。
「電車で来た私はラッキーでした」
「駅はすぐそこですからね。雨に濡れることはない」
「いえそうではありませんよ」
N氏の腹が鳴る。そこへ料理が運ばれた。
「もしかしたら珍しいことを仕出かしたあなたのせいで大雪が降り、電車は止まって、こうして肉を食うこともできなかったかもしれませんから」
その他
公開:22/09/03 15:13

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