Ⅰ.067 ペルビエの攻防~宣言~

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「自分から返してくれたんですか?」
 トトが意外そうな顔を向けた。
「俺が無理やり取り上げたとでも思ったのか?」
「説得ぐらいはしたのかなと」
「そんなこと…」
 そこで主人は口を噤んだ。彼はあの時、御宝を取らぬままその場を去ろうとしていた。敗北を認めたというより、勝負を投げうっていたのだ。
「じゃあ、あの時の拾ったと答えたのは…」
「そのままさ。嘘はついてないぞ」
 対決後に受けた彼の取材で、主人は御宝を奪還した方法についてただ一言-
『あいつが落としたのを拾っただけさ』
 とだけ答えていた。明らかに含みのある表現だったが、結局は怪盗に対する扇動的発言として片付いていた。
「それにしても、その子もよく返してくれましたね。怪盗が盗んでまでして届けてくれたのに」
「あの子は、貴族だからな」
 主人は静かに言い切った。
「言われたよ。必ず自分で取り戻すから、ちゃんと返しておいてくれってさ」
ファンタジー
公開:22/08/30 01:42
連載 ファンタジー 怪盗 探偵

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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