しーっ、静かに

息子の喘息をきっかけに都会から長閑な田舎へと引っ越した。
今や仕事はリモートで出来る時代。多少の不便はあるがここでの生活は気に入っている。
ただ一つ難点を上げるとすれば、ここは都会以上に騒がしい家である事だ。
「たかしーっ、座敷童ーっ、静かにしなさい！」
板張りの床をどたどたと走ってはキャッキャとはしゃぐ子ども達。まったくもう…元気になったと思ったらやんちゃが過ぎる。
「がっはっはっ！子どもは元気が一番だ！」
豪快に笑う座敷童子。座敷童の母で家を守る鬼でもある。
私達は古民家で鬼の一家とシェアハウスをしている。
大きな家だし、息子の遊び相手がいてくれるのは嬉しいけどこれが何とも苦労が多い。
「ただいま！」
一番の苦労が夜遅くに帰って来た。今日も酒を飲んできたのだろう。夫と座敷童子（父）が大声を上げる。
「しーっ、静かに！子ども達が起きるでしょ！」
この生活は都会以上にいた頃より騒がしい。