しーっ、静かに

ママから貰ったクレヨン。僕の宝物だ。
今日は何を描こう？そうだ！この前絵本で見た魔法陣を描こう！魔神が出てきて僕の願い事を叶えてくれるかもしれない。
『魔神じゃなくて残念だったな』
魔法陣から現れたのは魔神ではなく悪魔だった。
『安心しろ。俺も魔神のようにお前の願いを叶えてやろう。願いは何だ？』
僕の願いはママに幸せになってもらう事。ママはシングルマザーで朝から晩まで僕の為に働いてくれている。そんなママに幸せになってもらいたい！
『母親の幸せか…良いだろう。ただし願いを叶える代償として、お前の大事なものを頂く』
僕の大事なもの…もしかしてママを連れて行く気！？
焦る僕に悪魔は不敵な笑みを浮かべ消え去った。

その日の夜、ママが「新しいパパよ」と言って男の人を紹介してきた。
…って、お前は昼間の悪魔じゃないか！
指摘しようとすると男は『しーっ、静かに』と言って、僕からクレヨンを取り上げた。