挨拶の長い引きこもり

‪ ”‬挨拶の長い引きこもり‪”‬とは引きこもりで家からあまり出ないのに、外で会ったときだけ異様に長い挨拶をするお隣さんのことである。

彼は朝ごみ捨てに出かける。そこで老婆に出会うと長い長い挨拶をする。
彼は褒められる。老婆にきちんと挨拶をすることを褒められる。

彼はときどき昼間公園に出かける。そこで幼稚園児に出会うと長い長い挨拶をする。そこで小学生に出会うと豆知識を披露する。
彼は遠ざけられる。その幼稚園児の母親に嫌な顔をされ遠ざけられる。
彼は遠巻きに見られる。その小学生の友達に遠巻きに見られる。

彼は挨拶をする。長い長い挨拶をする。
運が悪ければ会うことも無いし、喋ることも無い。運が良ければたまに会うし、たまに喋る。

ほんのときどき会って挨拶をするのが、密かな楽しみである。
何だって彼は、長い長い挨拶を返してくれるのだ。