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その男は、崖の先端に彫像のように立っていた。
静かに目を開けると、初めての動作かのように首を動かし、辺りを見渡した。周囲は深い森に覆われており、先には小高い山も見える。空には、色違いの月が二つ浮いている。今は日没前で、月を照らす太陽はまもなく山々の先へと身を隠そうとしていた。
男は次に、自身を注意深く見始めた。掲げた手を細かく動かし、その手で顔や身体に触れ、着ている衣服の感触を確かめた。男の外見は20代半ば、服装は薄手の肌着に革製の上下と地味で一般的なものだ。
ただ、首元にはペンダントらしきものを下げており、男の手も最後はそこに行き付いた。ペンダントに見えたそれは紐を通しただけのジュース瓶の王冠だった。形も歪み色も褪せているが、それを確かめた男の顔には、安堵の表情が浮かんだ。
「こんにちは」
男は挨拶をした。
それは、誰かにではなく、この世界<プレセーヌ>に対してのものだった。
静かに目を開けると、初めての動作かのように首を動かし、辺りを見渡した。周囲は深い森に覆われており、先には小高い山も見える。空には、色違いの月が二つ浮いている。今は日没前で、月を照らす太陽はまもなく山々の先へと身を隠そうとしていた。
男は次に、自身を注意深く見始めた。掲げた手を細かく動かし、その手で顔や身体に触れ、着ている衣服の感触を確かめた。男の外見は20代半ば、服装は薄手の肌着に革製の上下と地味で一般的なものだ。
ただ、首元にはペンダントらしきものを下げており、男の手も最後はそこに行き付いた。ペンダントに見えたそれは紐を通しただけのジュース瓶の王冠だった。形も歪み色も褪せているが、それを確かめた男の顔には、安堵の表情が浮かんだ。
「こんにちは」
男は挨拶をした。
それは、誰かにではなく、この世界<プレセーヌ>に対してのものだった。
ファンタジー
公開:22/08/28 08:31
連載
ファンタジー
異世界
転生
まずは、こんにちは。
練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。
小説・脚本なども執筆してます。
【番号なし】 用語・設定解説
【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。
【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』
【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。
【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』
【001~】 短篇集『short TaleS』
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