塵山

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塵も積もれば山となるーー実際にそのような山ができてしまった島国があった。
そこで、野党が「塵ひとつないクリーンな国家」を公約に掲げて与党に国政選挙で圧勝した。
ただ、この島国の高度経済成長と産業発展が大気汚染を伴う塵を撒き散らしというよりは、火山国特有の噴火が頻発し、大量の塵が積もって山ができたという解釈が正しかった。
早速、時の政府は、国家非常事態宣言を発出し、国土塵院を創設した。
国土塵院は、塵でできた山、塵山の地理的位置を特定したうえで地理情報システムを駆使して分析し、塵山の地図を作成した。
時の政府は、噴火が発生するごとに塵山を噴火口に投入して燃やそうとしたが、塵山がみるみるうちに大きくなり、いつしか国土全体を塵山が覆い、さらに塵山が残らず島国の噴火とともに消え去って、最後に島国そのものが地図上から消滅した。
この島国が小松左京の小説『日本沈没』のモデルとなったことは知る由もない。
その他
公開:22/08/27 07:05
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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