勇者の召喚

おれは勇者のコスプレを着て、会場を歩いていた。少しばかり注目されていい気分だった。
ふと違和感を覚えた。向こうから敵キャラらしき者が来た。向こうもコスプレかと思ったが、そうではなかった。どうやら異世界に召喚されてしまったらしい。

おれのコスプレの格好を見て、異世界の奴はおれを頼もしいと思い召喚したのかもしれないが、いい迷惑だ。
正義感に駆られたわけでもないのに、生きるために敵を殺さなければならない。向こうだって生きるために必死なのにそういう者を倒すのは良心が痛む。村民にだってスパイがいるかもしれないから猜疑心も強くなる。

そうこうしている間に、戦争が泥沼化して停戦にしようではないかとトップ同士で話し合いがついたようだ。
異世界の奴らもおれに用は無いと判断したのか、元の世界に戻された。
しかし異世界で身についてしまった暴力性は変えようもなく、暴れて刑務所に入った。
その後ヤクザになった。