ぬりかべ

私はドルオタで、それが原因でいじめに遭っている。
「アイドルと結婚できるとでも思っているの？」
思っていない。私は応援出来ればそれでいい。
そう話す私を周りは否定する。何を言っても聞いてもらえない。
辛い現実に自殺も考えた。
『命を粗末にするんじゃない！死んだらもうライブも見れないんだぞ！』
そんな私に声をかけて来てくれたのは壁だった。
壁に耳あり、とはよく言ったものだ。壁は私の話をちゃんと聞いてくれた。
聞けば壁も昔、役者の追っかけをしていたらしい。『私は壁でいい。壁になりたい』と願っていたら、いつの間にかぬりかべになっていたと話す。
壁の話に思わず笑ってしまった。私も壁になりたい。そう話すと壁は私を受け入れてくれた。私もぬりかべにしてくれた。
ぬりかべとなった私は今も推し活を続ける傍ら、私をいじめていた連中の前に立ち塞がり、奴らが越えられない壁を前にもがき苦しむ様を見ては楽しんでいる。