しーっ、静かに

俺の妹は変な奴だ。虫取りに来た俺の後をついて来たかと思えば、しゃがみこんで動こうとしない。
疲れたのか？と聞くと首を横に振る。
飽きたのか？と聞くと首を横に振る。
兄妹なのに考えている事がまるで分らない。俺はそんな妹を置いて一人虫取りを始めた。
本当はカブトムシやクワガタが欲しいけど、セミで我慢しよう。

今日も大量のセミを捕まえた。妹に自慢してやろうと籠を手にまだしゃがみこんだままの妹に近寄る。
「しーっ、静かに」と言われムッとした。
だが、妹は俺に何か見て欲しいものがあるらしく手招きする。
そっと妹に近付くと妹が指差す先でセミが脱皮をしていた。
脱皮したてのセミはじっとしていて動かない。いつ空を飛ぶのだろう？俺と妹はセミを見つめ続ける。
突然セミが空の飛び方を思い出したかのように羽を広げ飛んで行く。その姿に感動した。
俺は虫かごを開けセミを逃がす。明日は昆虫観察しない？と妹に誘われた。