しーっ、静かに

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スランプの私を祖父が山登りに誘ってくれた。
山頂の素晴らしい景色につい大声を出してしまいそうな私を祖父は制し、繁みの奥へと隠れるよう言った。
「運が良けりゃ、いいもんが見れるぞ」
いいもの?よく分からないけど祖父と二人、繁みの奥で息を潜める。
ばさっ!と、大きな鳥が羽ばたく気配がした。山頂に目を向けると一頭のペガサスが羽を休めるように佇んでいた。
そのあまりの神々しさに息をするのも忘れ、私はペガサスに見惚れていた。
ペガサスが去ると祖父が山頂へと足を向ける。そして何かを拾い、差し出してきた。
「ペガサスの馬毛だ。こいつでバイオリンの弦を作ってみぃ。スランプなんて飛んで行っちまうぞ」
祖父からペガサスの馬毛を受け取り、言われるがまま弦に使用した。

力強く羽ばたくような音色に私は奏者としての自信を取り戻した。
コンサートでも私の演奏に会場が静寂に包まれる。私の傍にはいつだってペガサスがいる。
ファンタジー
公開:22/08/28 20:42

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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