百四十万獣の王

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ライオンは百獣の王と呼ばれることに不満があった。
なにしろ、世界中には百四十万種も動物がいるという。百獣の王では、雑魚もいいところだ。せめて千獣の王か、万獣の王と呼んでほしいものだ。
もっとも、ライオンより強い生物はいる。巨大なゾウは最強だし、集団行動をとるハイエナにもかなわない。それに、なにより恐ろしいのは人間だ。あいつらは銃を持ち、それでどんなに強い動物も打ち殺す。
また人間がやってきた。
やつらはクルマでサバンナを駆け回り、地面に降りると、オレに銃口を向ける。もう助からない。せめて威嚇の吠え声をあげるが、むなしく空にかき消される。
そのとき、人間は慌て始めた。体中を払いのける動作をして、銃で地面をたたきつける。
人間と戦っているのはサスライアリだ。サスライアリは人間をエサとしか認識していない。数の暴力で、人間をまたたくまに駆逐していく。
彼こそ百四十万獣の王だ。ライオンはそう思った。
SF
公開:22/08/28 09:57

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