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無から有を生み出す事は、不可能なのだ。
「…………」
しかし、だからと言ってここで諦める訳にはいかない。この場にいるのは自分だけではない。自分の失敗を嘆くよりも先に、やるべき事がある筈だ。
そう思い直した浩一が顔を上げると、そこにはもうアリシアの姿はなかった。
――いや、違う。先ほどまでアリシアがいた場所に、今は月下残滓があるだけだ。既にアリシアはこの場にいない。
(ああ……)
どうして、俺はこんなにも弱いのか。
そう思うと同時に、どうして、あいつらはあんなに強いのか。
「俺は……」
その呟きは誰にも届かない。
誰からも期待されず、何の才能もない侍は、それでも立ち上がる。
刀を支えにして立ち上がり、そして歩き出す。
身体は震えている。心も震えている。だが立ち止まるわけにはいかない。
何故なら自分は、戦わなくてはならないからだ。
もう一度言う。自分自身に。
刀を取れ。極限まで魂を振るえ。
公開:22/08/28 09:49

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
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・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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