しーっ、静かに

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大家族の末っ子である僕は兄姉にいつもいじめられていた。
おやつは取らるし、玩具や洋服は全部おさがり。凄く嫌だった。
だけどそんな僕にも特別が一つだけあった。
「しーっ、静かに。君にだけ特別だよ」
一番上の姉が作ってくれるカルピス。僕の分だけいつも濃くしてくれていた。
とっても甘いカルピス。姉の作ってくれる特別なカルピスは僕の大好物だった。

あれから月日が経ち、僕も大人になった。
今でもカルピスは好きで飲む。自販機で購入してはこんなに薄かったっけ…と首を傾げる。
家族の集まりがあり、久しぶりに実家に帰った僕。
一番上の姉が皆によく冷えたカルピスを振る舞ってくれた。
僕が大好きだったカルピス。何故だか薄く感じた。味覚の変化だろうか?
台所をそっと覗く。
「しーっ、静かに。君にだけ特別だよ」
姉はそう言って、最年少の甥っ子に濃い目のカルピスを作っていた。
その姿に少しだけ、寂しさを覚えた…
公開:22/08/25 20:50

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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