しーっ、静かに

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草木も眠る丑三つ時、ふと枕元に何者かの気配を感じ目を覚ましてみると、この世の者とは思えない美しさ持った女性が座っていた。
「もしや夜這いですか?」と尋ねると頬を抓られる。
『旦那様、お迎えに上がりました』
立ち上がる女性。女性はその体に、人ならざる器官を有していた。
しかし恐れはない。僕も布団から身を起こし、女性の手を取る。
『本当に…宜しいのですか?旦那様は人の世で生きていた方が幸せに…』
女性の唇にそっと人差し指を当てる。
「しーっ、静かに。皆が起きてしまいます。…それに、覚悟なら出来ています。僕は貴女と契りを結べるのなら人間である事すら捨てましょう」
僕の答えに女性は強く手を握り返す事で答えてくれた。着の身着のままで、僕は彼女ともう二度とは戻らぬ旅に出る。

これは昔々、人と妖の許されざる恋路の果てに起こった物語。
神隠しと呼ばれるものの正体であり、駆け落ちの起源とされている。
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公開:22/08/25 20:47

幸運な野良猫

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