しーっ、静かに

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こんこん、と押し入れの中から音がする。
何だろうと思って開けてみると押し入れの暗闇から沢山の青白い手が現れ、私の体を掴むと中へと引きずり込んだ。
抵抗を試みるも両手両足は勿論、口も塞がれている。これでは助けを呼ぶ事も出来ない。
でも諦めてはダメだ。私は青白い手を振り払おうと必死に体を動かす。
『しーっ、静かに。大人しくしないと、死ぬよ』
耳元で囁かれた言葉に私は動きを止めた。涙が溢れる。あまりの恐怖に意識さえ遠のいていく…

「大丈夫か!頼む!返事をしてくれ!」
重たい瞼を開ける。夫が不安な表情で私を見つめていた。
「良かった…君が無事で本当に良かった…」
涙を流しながら私を抱きしめる夫。何があったのだろう?
「さっきまでウチに逃走中の殺人犯が立て籠もっていたんだ。犯人は隠れていた君に気付かなかったんだね。本当に良かったよ…」
夫の説明にハッと気づく。あの言葉はそういう意味だったんだ…と。
ホラー
公開:22/08/26 20:44

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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