闇を買う

海外旅行に行った時、ふと立ち寄ったブラックマーケットで”闇”が売っていた。
不気味なそれに顔を顰めるも現地の人達は老若男女問わず闇に手を伸ばしては耳に当てている。
『ここは日本と違い、白夜等の影響もあって夜が短い時期があるんだ。そんな時でも夜を感じ、眠る為のもの、それが”闇”さ』
成程…と納得する。国が変われば文化も変わるものだ。
適当に闇を選び、耳に当ててみる。
無音。痛いくらいの静寂にこれは合わないと耳から離す。目を閉じた際のぼんやりとした暗さは丁度いいんだけどなぁ…
その隣の闇を試してみる。夜の海。さざ波のような音が耳の奥へと届きとても気に入った。
この国では幼い頃から闇に慣れ親しむ風習があるらしく、子ども達は大人になっても心の闇との付き合い方が上手なようだ。
日本でも闇は売れると私は確信した。だから闇を大量購入する。
だが残念な事に日本では”闇営業”は禁止されていると後から知った…