しーっ、静かに

「しーっ、静かに。お兄ちゃんの邪魔しちゃダメよ」
母はそう言って空手の練習をする兄から妹の私を遠ざける。
「もうすぐ華道教室でしょ。早く準備しなさい」
はぁい、と返事をするも私は花が好きじゃない。それより兄のように体を動かしたい。
兄がちらりと私を見る。細くてきれいな指。繊細な所作は私よりずっと華道に向いている。
二人してため息を吐く。男らしく、女らしくで無理やりやらされている習い事。本当にやりたいのはこれじゃない。
窮屈な生活に嫌気がさした私と兄は、決めつけを壊すと決めた。
兄が着物で花を生ける。私よりずっとセンスのある兄に先生が驚いた。
私が道着で拳を突き出す。兄よりずっと力強く鋭い一撃に師範が黙る。
男の子だって花を愛でたい。
女の子だって暴れたい。
男らしく？女らしく？そうじゃない。自分らしく、だ。
もう「しーっ、静かに」なんて言わせない。決めつけを押し付ける世界に物申してやる！