しーっ、静かに

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昔、家族と海外旅行に行った時の話。幼い僕は迷子になってしまい広場で一人うなだれていた。
道を聞こうにも言葉が通じない。食べ物を買おうにもお金がない。どうする事も出来ない状態に、とりあえず人の多い場所でじっとしているしかなかった。
僕の目の間にリンゴを持った少女が現れた。少女は僕にリンゴを差し出す。
本当は売り物なんだろう。だけど「しーっ、静かに」といったジェスチャーで僕にリンゴをタダでくれた。
それはとても美味しくて、瑞々しくて、元気が出た。
無我夢中で食べた後、お礼を言おうと顔を上げるも少女はもういなかった。
代わりに両親が目の前にいた。
奇跡のようなその出来事に僕はあの子はきっと天使に違いないと思った。
でも違っていた。
20年後、海外で働く僕はある女性と出会い、結婚した。
その女性こそあの時の少女であり今の僕の女神でもある。
そう人に話すと「しーっ、静かに」と彼女は照れ笑いするのだ。
公開:22/08/22 20:49

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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