非日常の日常

いつもの朝、いつものスーツ、いつもの街並み。
とある一つを除いていつも通り変化のない日常だった。
「ほんと、なんだこれ」
私がいつも通勤で使う道のりには納豆が引かれていた。納豆は一定の幅を持ち、どこが終わりか分からない位彼方へのびていた。
私は驚きつつも非日常に目を輝かせて、納豆の先を目指した。
暫く先を目指して走っていると後ろ向きで歩きながら杓子で納豆を丁寧に撒いているおじいさんがいた。
ついに見つけた。私は興奮して
「あなたはなんで納豆を撒いているんですか？」
と問いかけた。
おじいさんはその言葉にため息をつき、ゆっくりと答えた。
「最近の奴らはなにか理由があると深読みしやがる。理由なんてねぇ。撒きたいから撒いてんだ。お前らが望んでるような非日常なんてねぇんだよ」
熱を冷ます様な発言に私は冷静になった。
ふと、時計を見る。出勤時間は疾うに過ぎていた。