心の辞書

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私は心の反映する辞書を買った。適当にめくれば、その時の心を反映した適切な言葉を引き当てることができるのである。

例えば散歩から帰ってきて辞書を引くと、自然の美しかった風景や町の変わった光景を表す適切な言葉を辞書が探り当ててくれる。
私はその言葉を使い、詩や俳句、短歌などを書いた。

さすがに辞書の力は抜群で、大衆に受け本もそれなりに売れた。
テレビにも出るようになり、指南書も出版したりした。
教室を開き、生徒も部屋に入りきらないほど来てくれるようになった。

しかし私が辞書を引こうとすると、変な言葉しか出てこなくなった。高級料理だの接待だの、傲岸不遜だのという言葉が出てきた。

私の驕りが、辞書に指摘されたようだ。町を出て田舎に移り住み、もう一度感性を磨き直そうと思った。
ファンタジー
公開:22/08/22 17:14

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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