楽器のない音楽会
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友人からコンサートに誘われ、暑さの残る九月の森を訪れた。
チケット代わりにもらった木の葉を手に野外席へ座る。
「季節限定なんだ。君に聴かせたくて」
色違いの紅葉を握る友人は、自分が演奏する様な熱っぽい口調だ。『楽器のない音楽会』と題した舞台には、燕尾服の指揮者が一人きり。
沈む太陽を背に演奏が始まる。
腕を構えた指揮者が人差し指を口に当て、会場が静まり返った。
吹き抜ける風を前奏に、樹上から降り注ぐ蝉の声。タクトを合図にミンミン、ジリジリ、ツクツク、ニイニイが各パートを奏で、ヒグラシのカナカナがハイライトを飾る。
陽が落ちて第二楽章。リィリィ、コロコロ、チリチリ鳴き交わす草むらの虫達に、長かった夏の終わりを思う。
「虫達がなぜ鳴くのか知ってる?」
打って変わって静かな声。
コンサートの終演と共に、長過ぎた友人関係も終わりを告げそうだ。
夜色に染まるチケットを、うなずく様にそっと重ねた。
チケット代わりにもらった木の葉を手に野外席へ座る。
「季節限定なんだ。君に聴かせたくて」
色違いの紅葉を握る友人は、自分が演奏する様な熱っぽい口調だ。『楽器のない音楽会』と題した舞台には、燕尾服の指揮者が一人きり。
沈む太陽を背に演奏が始まる。
腕を構えた指揮者が人差し指を口に当て、会場が静まり返った。
吹き抜ける風を前奏に、樹上から降り注ぐ蝉の声。タクトを合図にミンミン、ジリジリ、ツクツク、ニイニイが各パートを奏で、ヒグラシのカナカナがハイライトを飾る。
陽が落ちて第二楽章。リィリィ、コロコロ、チリチリ鳴き交わす草むらの虫達に、長かった夏の終わりを思う。
「虫達がなぜ鳴くのか知ってる?」
打って変わって静かな声。
コンサートの終演と共に、長過ぎた友人関係も終わりを告げそうだ。
夜色に染まるチケットを、うなずく様にそっと重ねた。
ファンタジー
公開:22/08/22 13:31
月の音色
月の文学館
テーマ:しーっ、静かに
朗読採用いただきました♪
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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