Un ange passe~沈黙の天使

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会話が途切れて場に沈黙が訪れた瞬間を、フランスの諺で『天使が通った』と表現するそうだ。
あるショートショート作家いわく、悪魔は合わせ鏡で捕まえるらしいが、天使の場合はどうだろう?

という事で、ノリの良い悪友二人と実験を試みた。
僕の部屋で雑談に興じ、頃合いを見て話をやめる。その沈黙を通りすがる天使を拝んでやろうの算段だ。
端から捕まえる気はない、一目見れば儲けものと気楽に開始。バカ話に花が咲き、実験そっちのけに盛り上がった末、悪友二人は高いびき。
実験は見事失敗か。苦笑いで部屋を片付けにかかり、ふと背中に衣擦れを聞く。

恐る恐る振り返る。
白い翼の生えた、輝く様な金髪美人と目が合った。
「あ……あの!」
困った様に首をかしげ、彼女は消えてしまった。僕が声をかけて沈黙を破ったせいか、あるいは日本語が分からなかったか。

もし次に会えたら連絡先を聞きたい。その為に僕はフランス語を勉強中だ。
ファンタジー
公開:22/08/22 13:22
月の音色 月の文学館 テーマ:しーっ、静かに。 星新一『鏡』こっそりパロディ

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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