遺失物係たち

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とある駅の遺失物センターの遺失物係が失踪した。その朝、何時になっても職場に出てこない。連絡が取れない。職員が報告に行くと「よくある話だ」と遺失物センター長がつぶやいた。新入りの係員が訝しがるがセンター長は意に介さない。「またひとつ遺失物が増えた。ちゃんと記帳しておくように」センター長が言った。
失踪したのはこれで四人目だ。みんな何故、どこに?新入りは気になって仕方がない。仕事が終わると、今朝失踪した係員の通勤経路を逆にたどった。駅から電車に乗って私鉄電車に乗り換えて郊外の駅で降りる。彼のアパートはこの駅から徒歩5分とか。ふと見るとセンター長が立っている。新入りが物陰から見るとセンター長の前を失踪した係員が歩いている。ふわふわと紙のように薄く道を浮くように軽く。センター長が背後からふうっと大きく息を吹きかけると薄っぺらくなった係員は空に浮いて風に流されて、夕闇にまぎれて見えなくなった。
その他
公開:22/08/20 11:07

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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