微妙なレストラン

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会社の近くに、小さなレストランがあった。
お昼休みになると、私はそのお店によくランチを食べに行っていた。
料理がとても美味しかったから、といいたいけれど、そうではない。はっきりいって、微妙な味なのだ。
とても美味しいとも、すごく不味いともいえない、何ともいえない味だった。
でも何故か、お昼になるとその店に足が向いてしまうのだ。
店のマスターも、ソース顔でもしょうゆ顔でもない、微妙なルックスの、掴みどころのない人だった。
接客もつかず離れずという感じで、それが私には何となく心地がよかった。
いつしかその店は、私の心の拠り所になっていた。

そして今、私はその店でマスターと一緒に働いている。彼の妻として。
決して愛想が良い訳ではないが、時折見せる優しさや、ギャグのセンスも、何とも微妙で憎めない。
他の誰でもなく、彼は私にとって絶妙の相手だった。
私は今、とても幸せだ。微妙に、ではなくて。
その他
公開:22/08/20 00:59
更新:22/08/20 01:23

和倉幸配

断続的にではありますが、趣味で細々とショートストーリーを書いています。

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