人魚へ変身

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城の王子は人魚に憧れた。人間は争いごとの絶えない、醜い生き物である。海の中で愛する人魚と、暮らしたいと考えた。

しかし海の中で生活するには、自分の声を失わなければならないらしい。そう魔女に言われた。構わなかった。
なまじ声があるから言葉にした途端に嘘になるし、ややこしいことになる。海の中で心で対話すればいいのだ。

海の中は想像以上に快適であった。愛する人魚に巡り合うことができた。
何だ人間は万物の霊長とか、地球の支配者とか言ってたけど、実は下等な生き物なんじゃないの、人魚の方がはるかに素晴らしい生き物なんじゃないのと、彼は思ってしまった。

他の人たちも、みんな王子の真似をし始めた。みんな天国に行ったような心地よさを感じた。
人間の歴史は、終わりを告げようとしていた。
ファンタジー
公開:22/08/19 23:33

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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