したたかじいさん

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「今は、負けておこう」
わしは妻にそう言い聞かした。今まで隣の花咲かじじいに散々煮え湯を飲まされてきたが、長いスパンで物事を考えようと思ったのだ。

「花さかじじいは、自分の良識や評判を気にするあまり、外れたことは出来ない。かたやこっちには失うものは無いんだ」

わしは花咲かじじいが、撒いた灰を搔き集めた。成分を分析し、そっくり同じものを作った。

自然のペースに合わせてもごく限られた期間しか咲かない。かと言って年中咲かせようとしても、樹に過度の負担を与える。生かさず殺さずの範疇のなかで灰を撒こうと考えた。

案の定民衆はわしの考えたペースを気に入ってくれて、見物客がたくさん訪れるようになった。屋台がたくさん出店するようになったから、みかじめ料で大儲けできた。
儲けた金を弱者救済と言いボランティアで寄付したから、名声も高まった。
ほら、わしの言った通りになっただろと妻と微笑んだ。
ファンタジー
公開:22/08/18 10:34

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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