幸せは来ない

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王子は昨日城から出て行った、若い娘を探していた。王子はあまり気が進まなかったが、側近の助言で忘れていった靴を履かせればいいだろうとなったのである。女性に失礼だろ、そんな安直な決め方なんてと思ったが口に出せなかった。

「うん、ぴったりだ。まさにきみが運命の人だ」
王子は大げさにそう言って、靴を履いた女性に抱きついた。女性は戸惑いながらも、嬉し涙を流している。

実際は靴はその女性の足より、小さ目だったが王子は強引に靴を履かせたのだ。王子はその女性の高貴な育ちと、品の良さに惹かれたのだ。
昨日、一緒に踊った女性は確かに綺麗だったが、品のなさを感じた。万一その女性が靴を履いてぴったり一致したらたまったもんじゃないと思ったのだ。

シンデレラはそんな出来事を知るはずもなく、今日もこき使われる一日を過ごしていた。
なまじ昨日は信じられない楽しい夜を過ごしたから、いつもの日常がより辛く感じられた。
ファンタジー
公開:22/08/18 09:28

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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