四役所 秋課
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帰省している妻の実家に行く前に、出生届と一緒に子どもの手のスケッチを提出しに行った。懐かしい匂いが鼻腔を掠め、思わず受付の男性をじっと見る。
「久しぶり」
ぎんなんの匂いが記憶の糸を手繰り寄せ、思い出が溢れた。
彼は中学のイチョウ部の同級生。
「今、秋課にいるんだ。イチョウも担当してる」
懐かしさに浸っていると、彼は僕が提出したスケッチを手に受付から出て手招きをする。
ついて行った先は建物にぐるりと囲まれた中庭。真ん中の大きな幹に、見惚れるほど赤いモミジの葉が無数に茂っている。彼がスケッチを翳すと、手のひらの絵が浮き出てモミジたちに重なった。
「この町で生まれた子が幸せに育って欲しいっていう願いが込められてるんだ」
そう話す彼は、もう僕の知らない社会人の顔になっている。
果てない青い空に向かって咲く赤いモミジ。それは、どこまでも続く未来を掴もうとする手のひらのようだった。
「久しぶり」
ぎんなんの匂いが記憶の糸を手繰り寄せ、思い出が溢れた。
彼は中学のイチョウ部の同級生。
「今、秋課にいるんだ。イチョウも担当してる」
懐かしさに浸っていると、彼は僕が提出したスケッチを手に受付から出て手招きをする。
ついて行った先は建物にぐるりと囲まれた中庭。真ん中の大きな幹に、見惚れるほど赤いモミジの葉が無数に茂っている。彼がスケッチを翳すと、手のひらの絵が浮き出てモミジたちに重なった。
「この町で生まれた子が幸せに育って欲しいっていう願いが込められてるんだ」
そう話す彼は、もう僕の知らない社会人の顔になっている。
果てない青い空に向かって咲く赤いモミジ。それは、どこまでも続く未来を掴もうとする手のひらのようだった。
ファンタジー
公開:22/08/14 19:10
更新:22/10/06 21:25
更新:22/10/06 21:25
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