僕は気づいた

拍手が鳴り止まず、僕はただ呆然と立ち尽くした。頭の中を様々な思考が駆け巡る。そして――
「……あは」
思わず笑みが零れた。
「ふふっ、あははっ！」
ああ、そうだ。そうだったんだ！
やっと分かったよ！ どうして才能あるこの僕がこんなにモヤモヤしていたのか……どうして僕が、あんなにも彼女の事を気に掛けていたのか！
「あははははははっ！！」
ああ、もう！ なんでもっと早く気付かなかったんだよ！？
僕は自分のあまりの鈍感さに笑いが止まらなかった。
「はぁー……ふぅー……」
……でも、それも当然か。だって僕は今までずっと勘違いをしていたのだから。僕と彼女の間には、そんな関係はなかったのだから。それに気付けなかったのも無理はない。……うん。だけど、それでもようやくスッキリとした気分になれたよ。
僕は彼女の演奏に魅了されたんじゃない。彼女自身に惹かれたんだ。そうか、これは……。この感情は、恋だったんだ。