悲劇のヒロイン

ナミコは交友範囲が狭く、本も全然読まない人であった。母親になってもそれは変わらなかった。

家族ドラマが好きで、毎日見ていた。息子はナミコ同様気の弱いタイプだったので、よく学校でいじめられた。家族ドラマの世界を鵜吞みにして、何でやられたらやりかえさないんだ情けないと言うのみであった。

息子が堪りかねてナミコの欠点を指摘すると、親が悪ければ自分だけでも直せばいいだろうと開き直るのみであった。
悲劇のヒロインを気取るのが好きみたいで、出来の悪い息子が居る中で頑張っている私はすごいと酔いしれているみたいだった。

息子は暗くひねくれた性格に育った。するとナミコは何で私に心を開かないのだ、とまた怒るのだった。
息子の自己否定はますますひどくなり、自分は生きる価値がない死んだほうがいいと、車に飛び込んで死んでしまった。

ナミコはどうして死んでしまったの、可哀そうにとまた悲劇のヒロインを演じた。