めでたい母さん

なんでもない日。普通の日だというのに、今日の夕食は豪華だった。

「はい、できたよ」
「お、今日めっちゃ豪華じゃん。どうしたの？」
「今日はめでたいからね」
「何？何かあったっけ？」
「発表は夕食後」

鯛のお刺身、鯛の煮つけ、鯛のお味噌汁。鯛ばかりだ。

「めでたいってね。鯛料理よ」
「おお、美味そうだ。いただきます」

父さんは無言で食べている。まあ無口な人だからいつもの事だけど。
夕食を食べ終わり、俺はついに気になっていた事を聞いた。

「それで？こんなに豪華な料理出して、どんな良い事があったんだよ」
「スーパーで鯛が安かったのよ」
「はっ？まさかそれだけ？」
「違うわよ。発表するわ」
「うん？」
「お母さん。妊娠しました。三ヶ月です」
「ええー！？」

唐突だった十六歳の夏。母の妊娠が発覚した。それから間もなくして生まれた弟。今日はめでたい。ちなみに弟の名前は、鯛一だ。