ぬるくなった缶ビール

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コンビニから出る。ビニール袋の中には一本の缶ビールが入っていた。毎年、この日に買う缶ビールだけはなぜか習慣で有料化されたビニール袋ごともらってしまう。
こういった所から節約しないとな。
私はこの小さな反省が恒例になっていた。
少し歩いていってとある電柱の前に立つ。今年は少しの花が添えられているだけであった。
「もうあの日から10年も経つのか」
やけに町並みが見慣れないはずだ。
私はビニール袋から缶ビールを取り出し、電柱へ添えた。まだ冷えているのか缶は強い日差しを浴び、結露していた。
私の親友はバイクの事故で死んだ。ヘルメットも被らず外壁に頭から思いっきり突っ込んだらしい。
「じゃあ、俺も飲ませて貰おうか」
鞄から缶ビールを取り出す。それは鞄の中で完全にぬるくなっていた。
俺はいいんだ。お前と飲めるだけで。
一口のみ、少し拝んでから電柱を背中に帰路に着いた。
青春
公開:22/08/13 21:25

リマウチ

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